森羅万象の旅日記  


10.岩魚の塩焼き

目指す旅館はすぐ見つかった。小奇麗なこじんまりとした旅館である。私はどうも、あのペンションというのがちょっと苦手なのである。洋室よりも和室のほうがいいし、テーブルよりもお膳の方がよく、レタスやステーキよりも菜っ葉や刺身の方が好みです。

ちなみにペンションとは英語で年金とか扶助料ということで、年金などを与えて退職させることだそうです。つまり退職してからの生活がペンション生活なのです。

ここの旅館の食事はよかった。ご主人の思いやりがひしひしと伝わってきた。岩魚の塩焼きにいたっては、食べる直前に、あっちっちっちっといいながらお膳まで持ってきてくれた。

温泉は安曇野特有の白濁温泉である。この辺は湯量が多いのか、外を歩くと川のあちこちから白い水蒸気が立ち上っている。ただ猫肌の私にとってはちょっと熱いが、季節が真夏以外だったらちょうどいいのかもしれない。

ここで、ここに宿を取ったことを天地の神に感謝しなくてはいけない。というのは、夕食もたけなわのころ雨が降り出し、あっという間にバケツをひっくり返したような大雨になったことである。

もしキャンプをしていたら、我々のテントは間違いなく溶けていたはずである。
なにしろ、二千九百八十円、これは絶対溶ける。

この長い道中で、こんな雨が降ったのはこれだけである。これを幸運といわずに何を言うのだろう。いや幸運だけではないな、最近、風水師としての風格も備わってきたような気がしないでもない私には、ここに宿を取れと言う「天声」が聞こえたような気もする。

天声といえば、あの"最高"の独活(うど)の大木はどうなったのだろう。人を思いやるかけらもない輩(やから)が、天声などとぬかして、本当に救いを求めている弱い人たちから、金品を巻き上げるのは絶対に許せない。

しかし、悪党どもではあるが、天行力とか右脳塾などのように、人を引き付けるような言葉をうまく使っている。あの大木にはそんな能力などなさそうだし、
影に小ざかしい奴がいるような気がしてならない。どんな世界でも、本当の悪党は表には出てこないものである。

次の朝は、昨夜の豪雨も上がり上天気。ご主人に見送られて宿を後にする。これは後日の事であるが、このご主人から大変素晴らしい年賀状が届いた。福寿草を押し花にして賀状にコーティングしたものであった。   つづく

風水ワンポイントアドバイス

最近、雅楽がちょっとしたブームのようですね。たぶん、東儀秀樹の影響があるのでしょう。

格好いいですからね彼は、彼が演奏をはじめると、みんな尊敬のまなざしで聞きほれていますが、私がオカリナを吹き始めると、どういう訳か、みんな去っていきます。

さて、あの雅楽の楽器の中で笙(しょう)は天の気を、篳篥(ひちりき)は地の気を、そして竜笛(りゅうてき)は大気を表しているのです。

ですから、雅楽を演奏するということは、天、地、人、の一体化をあらわしているのです。
天皇家、延いては日本の永遠性をも表しているのです。



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